Cさんが小学生の時分、全国で「こっくりさん」が流行っていたそうだ。
儀式の真偽はともかく、多感な時期の少年少女の中には、こっくりさんを行うことによって精神的に悪影響を受けてしまう子が少なからずいたという。
そのため、当時こっくりさんを禁止する学校が全国には数多くあった。
Cさんの小学校にもこっくりさん禁止のお触れは出ていたのだが、放課後になるとこっそりと集まり色々なことを相談したという。
その日も友人たちと一緒に空き教室でこっくりさんに勤しんでいると、急にドアが開き怒鳴り声が降ってきた。
「何をしているんだ!!」
突然の事態に動転したCさん達は這々の体でその場を撤収し、こってり絞られて帰路についたという。
異変が起こったのは次の日からだった。
Cさんが頼まれた夕食のおつかいを終え、自室でくつろいでいると母親が台所から声をかけてきた。
「ちょっと、なんでこんな物を買ってくるの?」
何事かとCさんが見に行くと、油揚げのパックを持った母親が怒って立っている。
「ちゃんと買う前に確認してよ、これじゃ使えないわ」
母親が差し出した油揚げは、パックの中でズタズタに千切られていた。
それからというもの、Cさんがお使いに出ると必ずと言っていいほどその中の食物に異常が起こるようになった。
パックされていようがいまいが関係なく、大なり小なりの破片に千切られてしまう。
特に、肉や魚などの損傷が目立った。
こっくりさんを中断したあの日から、自分の周りに何かが起こっている。
Cさんは次第にそう思いこむようになっていった。
「もう一度こっくりさんを呼びだして、何が悪かったのか聞いてみよう」
学校では誰に邪魔されるかわからないので、儀式は自室で一人きりで行うことにした。
夕暮れの薄暗い部屋の中で50音や鳥居を書いた紙の上に10円玉を置き――
「こっくりさんこっくりさん、どうぞおいでください」
呟きながら硬貨の上に指を乗せた
その瞬間、ツーっともの凄いスピードで10円玉がCさんの指と共に滑り出し、紙の上を右往左往し始めた。
そして10円玉は突然中央の鳥居の上でピタリと止まると、そのまま動かなくなった。
この日以降、Cさんが買い物に行っても荷物に異常は起きなくなったという。
炉辺談話
こっくりさん全盛期の時代の方から聞いたお話である。
自分にお話を聞かせてくれる人によくある話なのだが、怪異そのものよりも怪異の影響で自分の回りに疎まれることを恐れる人が多いような気がする。
この方もこっくりさんそのものより、親に怒られることが嫌だったという。
ちなみにこの話をとある感が強い方に聞いてもらったところ、狐ではないのではないかという意見をもらった。皆さんはどう思わるだろうか。