自分の住んでいる場所は東京でもかなり端の方に位置しており、駅から少し歩くだけで夜道は真っ暗になってしまうようなところだ。
ある冬の晩のことである。
その日は残業が長引き、駅前で買い物を済ませたら既に日付が変わりそうな時間となっていた。
両腕に買い物袋を下げ、あまり誉められたことではないがスマホを見ながら帰路を急ぐ。
液晶を目を落としながら黙々と道を歩いていると、突然右腕のビニール袋が後方に三度強く引かれた。
バンッバンッバンッと音が立つほどの勢いである。気のせいではない。
何かをひっかけてしまったか?
そう思いながら後方を確認するが、真っ暗な空間が広がっているだけだ。
当時は怪談を集め始めた時期だったこともあり、「ついに自身にも影響が及んできたか……」と真夜中の往来で暫く硬直してしまった。
我に返った後、やってきた恐怖に突き動かされ逃げようと前方に向き直る。
すると、自分が小さな神社の目の前に立っていたということに気づいた。
真っ暗な中そこにだけぽつねんと照明が灯っており、鳥居に掲げられている社号が照らされている。
あのとき袖を引かれた意味は、未だにわかりかねている。
炉辺談話
夜の神社には良くないものが溜まっているので、入らない方が良いという話を聞くことがある。
この場合、自分に憑いていた(?)何らかの良い存在が件の神社に入らないように忠告をしてくれたのだろうか?
それとも、逆に神聖な神社に立ち入られないように逆の存在が注意を引いてきたのか。
真相は分からないが、冬の真夜中に起きた恐怖の体験だ。