もう数十年も前、僕が学生時代のことだ。
通っていた学校は東京の江戸川橋と早稲田のだいたい中間にあり、部活を終えた僕らは徒歩で早稲田を越えて、夜な夜な池袋まで足を延ばすというのが当時の定番コースだった。
その途中に存在するのが「雑司ヶ谷霊園」であり、この霊園内を縦断して近道をすることも多かった。
そんな雑司ヶ谷霊園について、一つの噂があった。
夜に雑司ヶ谷霊園を通ったとき、向こうに見えるサンシャインビルが真っ赤に光っていたらそのまま引き返さないと二度と帰っては来れない、というものだ。
危険といわれたのは、とある将校の墓標が存在する、霊園の中でもかなり大きな通りから見た景色のことだった。
感が強い友人が言うには、そういう時はサンシャインビル自体がお墓になっているのだそうだ。
幸いにも僕はそのような状況に遭遇しなかったが、数人の友人が現地で火の玉やUFOのようなものを目撃したそうだ。
もしかしたら、雑司ヶ谷付近をさまよう浮かばれない者たちは、近辺で一番目立つ建物に縋りに行ったのかもしれない。
炉辺談話
高校のころに僕自身の周りであった噂である。
実際霊園から見たサンシャインビルは、無機質なライトを窓に灯し闇夜にそびえたっており、何かとてつもない大きさの墓標のように感じた。
ちなみに、googlemap等で現在の雑司ヶ谷霊園からのサンシャインビルの風景を見てみると、以前はなかった高層ビルがいくつも立っている。
以前はサンシャインビルだけが夜空に一本だけ伸びており、異様に目立っていた。
仮に昔よりも怪異が落ち着いていたら(減少していたら)、この辺りにも原因があるかもしれない。